台風が投降してきたのは、結局それから更に二日経ってからの事だった。
 警察では、もうすっかりおとなしくなっており、ぽつりぽつり供述をはじめているらしい。 
 店の修繕が一段落着いて、再開して暫くして口開けにやってきた常連の新聞記者の子が新しく持ち込んできた出汁でやりながらこっそり教えてくれた。
 「大将、知ってる?この間の騒ぎ、裏で世間体が一枚噛んでるらしいよ」
 「えっ、世間体さん?何でうちみたいな小さい店にあんな有名所が?」
 「今時、大将だけだよ、何も知らないの。世間体は大分あくどくやっててあちこち評判落とすためなら何でもやってるよ」
 詳しく聞くと、元々騒ぎを起こすつもりで台風はあの日、うちに来ていたらしいのだ。
 金に困って、世間体の依頼を受けたとの事だ。
 一概に世間体が悪い、とは云い切れないが、物騒な世の中になったものだと思う。
 「いや、やっぱり世間体が悪いって事になるのかねえ」
 独り言のように呟いた所で、戸が開いて、
 「すいません、一人なんですが見学、良いですか?」
 やはり若者だ。俺は笑顔を崩さず、
 「ええ、どうぞ。奥の方が涼しいですよ」
 今日も暑くなりそうだ。

 以下次回。

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